ケントのブログ(ふわふわ)

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又吉直樹の話題の小説「火花」

文学芸人と言われる又吉直樹さんの中編小説が話題ということで、早速ぽちりました。
この雑誌初の増刷のようで、僕ははじめて文芸誌というものを手にしました。評判聞いた同じような人がきっと多かったんでしょう。

無視しようにもどうしても又吉さんが書いたという色眼鏡は払拭できないのですが、その色眼鏡を外した(つもりの)意見としても「これはすごい本」です。

以降ネタバレあるよー。

小説として

文学作品をどうのこうの言えるほど、本を読んで自分の中に尺度を持っていないので、言えた話ではないんですが、良いか悪いかどちらかと聞かれたら、確実に良い本。人の受ける感覚は人によって違うというのは分かった上での良い本です。99%の人がいいというと思います。

まず文体はそこいらの人が書けるもんじゃなくて確実に小説家の文体太宰治ファンなだけあってそのくらいの時期の小説で書かれそうな言い回しをしている(ようなきがします)。今の人が言わないような古い表現はないけども文芸作品として確かです。

芸人を話に扱うと、厳しい世界の中での栄枯盛衰が描かれがちなのかなと思います。芸人交換日記 とかね。
本格的に別の世界を描こうとする場合はその下調べとかはなみなみならぬものが必要になるんでしょうから、初めはこれでってことなんでしょう。

内容に関して

主人公の徳永は又吉さんなんじゃないかと思って読んでいました。そんで先輩で師匠の神谷さんはどこかにこういう芸人さんがいる(/た)んでしょうね。辞めてしまった人かもしれないし、今成功した人かもしれないけどモデルがいるかと言われたら居るような居ないようななハイブリットなイメージなんじゃないかな。
神谷さんが言う芸人哲学もその誰かがきっと言ってたんでしょう。みんなが言ってたことなんでしょう。

又吉(徳永)さんも理想の芸人というものが分かっていても、自身の性格や世間の要求からできなかったり、生きるための選択があるわけです。
芸人たるべき芸人に憧れ・親しみはあれど世間に認められなければ続けていくことができない。そんな数多の実在した芸人を供養したような本としても読めます。
だれしも愛すべき志があるんだよな。

スパークス解散で感涙しながら読んでたのに翌日のネットの声が非情すぎて一瞬でその気持ちが速度ゼロになった。はたっとw自分でも笑えるくらいにw これは又吉さん的には笑いどころだったんかな?笑っても良かったんだろうけどね。
そこも含め他のところでも、笑わされたりほっこりさせられたり、(心中)泣かされたり、心を右往左往とブウンブウンと揺さぶられました。
そう考えるだけで、優れた文芸作品って証明なのかもしれません。

最後の神谷さんねwあれなんか「又吉さんwちょっとwさすがにないない!」って思いながらも、話としてはなぜか受け入れられてて、その結果が残念なんだけど神谷さんが可愛らしく見えるっていう不思議w 愛され人情あふれるキャラに読者の中で育ってたからそれが可能だったんだろうなきっと。

歌の「神田川」のような時代感って現代ではほとんどなくて、芸人以外でも「神田川」感のある人々っているんだけど、作品とするには芸人以外は触らないでいたほうがいいような感じしますよね。
そういう意味では芸人生活を描くのって現代に残された神田川的だったりフォークソング的な部分なのかもしれません。

賞→10年後

この作品はなんかしらの賞をとるんじゃないかという声があります。各賞の判断基準は僕にはわかりませんが、なんかしらの賞は取るでしょう

それに、これを機にブレイクして芸人を題材としないものを書いてもきっとこれに引けをとらない素晴らしいものを書いてくれるでしょうね。
芸人としての活動もあるでしょうから、長編は無理だとかあるでしょうが良い物を期待してしまいます。

どうにせよ10年後確実に小説家又吉直樹さんはベストセラーを輩出していると思いますよ。

調子いいブログになっちゃいましたねw言い切っちゃってますよ僕。
まあ色眼鏡ってことにしておいてくださいw
時々そういうのもしとかないとね。

おすすめ度:★★★★☆(誰にでもオススメ!)